土葬の道しるべ 第14号
2015年12月末発行
土葬の会
〒400-0514
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皆様へ
お元気でおすごしでしょうか。
7月には風の丘霊園で6例目の土葬を行いました。会員も38名になりましてそのなかには19歳の学生もおられます。一般には葬儀への関心を示す年齢はほとんど中年から高齢者にかけての年代が世間での常識ですが。ところが会では10代、20代、30代と続き平均年齢は60歳ですから土葬への関心事は年齢ではなく人間であるが故の生き方そのものへの真実の追求といえます。
また、懇親会での意見交換も学びの場となり会の継続的活動となっています。
7月
先月問い合わせのあった、妹さんの土葬による葬儀を望んでおられた方がいましたが、御両親が納得されずに果たせなかったそうで、ご自身はどうすれば土葬ができるのかと悩まれておられました。
9月1日
東京の方から土葬の問い合わせがあり資料を送付しました。
9月16日
風の丘霊園で土葬が行われました。東京の方で土葬を望むとの遺書を残して亡くなったそうで親族から問い合わせがあったのです。
親族の方も土葬が初めてであり、お世話をした葬儀社も土葬ができることに半信半疑だったようで埋葬手続きまで時間がかかり、遺体を保管所に預かってもらって待機した状態でした。また天気予報では雨の恐れがあり晴れた日のうちに埋葬する必要があります。それでも、なんとか雨の予報前日に埋葬が決まり、あらかじめ送り込んであった重機を動かし、お寺さんに了解を取って所定の場所を掘ります。以前は掘り出した土を回りに盛り上げて置いていたのですが、昨年から大きな土嚢袋を用意してそれに入れるようにしたのです。こうすることによって周りに泥が散らからずまた埋め戻しが格段に速くなりました。というのも土嚢袋の下に帯紐がありそれを重機で吊ることによって逆さまにして一気に土を戻せるのです。
今回は山野井涼子と沼田映子さん、友人の健次にも手伝ってもらいました。2時間ほどで穴が掘り終わってもまだ到着せず、東京からの高速で渋滞があったそうで午後3時頃到着しました。
喪主の方が埋葬許可証をお寺に提出され、棺を運んで来られた葬儀社の方は30年この仕事をしているけど土葬の話を聞いて半信半疑で、立ち会うのは初めてとおっしゃっていました。喪主がお別れをすませると、今回は6人ですが2人でお互いにロープを手にしてストレッチャーから棺を吊って歩調を合わせ穴の両脇に進んでいきます。定位置に来たときに静かにロープを少しずつゆるめ棺を底に沈めます。
次に喪主にスコップで少しずつ土を入れてもらい、後は重機で土を戻しますが袋の逆さ吊りで一気に戻すことで時間が短縮されます。
最後は盛り土になります。いわゆる土まんじゅうが出来上がります。
そこに花などを飾って埋葬終了となります。それが終わるころにはぽつぽつと雨が降って来てタイミングよく終わることができました。
喪主の方は、「いろいろと大変お世話になりありがとうございました。」とお礼を言われましたが。無事終わって安堵です。喪主の方もご自身の土葬を望んでおられ入会されました。また初めて土葬に立ち会った友人の健次に感想を聞くと、この印象は一生忘れることは無いだろうと言っていました。彼はフイグ・ランディスグループ・ヤーパンで「ビリー」エドウアルト・アルベルト・マイヤー氏の出版活動を行っています。
9月19日(土)
第3回土葬の会の懇親会です。富士川町平林に遠くは兵庫県や三重県から参加され10名が集まりました。
これまでの状況報告、会員数が34名になりました。9月16日に8例目の土葬をしました。また作成中の土葬の会のパンフレットを見ていただきました。
そして幸福度世界一位「北欧の楽園」のスウエーデンに学ぶ(週刊現代より抜粋と入文)
「寝たきりゼロ社会の暮らしと考えから」終末の生き方や葬儀について意見交換しました。
「80歳以上でも寝たきりゼロを目指す。施設ではきれいな服で過ごし、本人の責任で意志を尊重、ベッドに縛り付けることはしない。日本ほど豊かな食生活ではない。96パーセントが子供と暮らすことはしない。日本は54パーセント。自立した強い個人が特徴。在宅サービスが基本で90パーセント、他は施設サービス。在宅での介護士による看護で自分の口で食事をする援助、嚥下訓練をする。胃ろうは虐待にあたるとしてスウエーデンでは延命措置は採らないようになった。施設内で亡くなるのが原則的で日本では本人の意思にかかわらず病院に搬送され延命措置をされて亡くなる。延命なしで看とる医者がいないから。
スウエーデンでは住み慣れた自宅や施設で息を引きとるのが一番という方針があり、寝たきりになると死期が近いサインと受け取り潔くあきらめる。トイレ掃除やベッドメイクなど手助けと会話が主で、日本では医療介護の発想で投薬、治療が行われるがスウエーデンでは本人がどんな助けを必要とするかを聞く。
日本では介護士は薄給できつい仕事、スウエーデンでは安定した公務員である。スウエーデンでは介護の負担は国や自治体がすることで国は一つの家族であるとの発想だ。日本のように家族が介護のため経済的負担を強いられたり親子共倒れになることは無い。それどころか施設を訪れる家族を手伝わせることもせず家族には一緒に楽しい時間を過ごさせる。世界トップレベルの福祉制度の充実があり教育は大学まですべて無料。
医療費の18歳以下は無料、国民の税金負担率は58.9パーセント、日本は43.3パーセント、スウエーデンは日本のような利権まみれの政治家、官僚、汚職などで国民の満足度が無いのと違って税金の使い道が明らかにされる。政治家はほとんどが兼業議員で会議出席時間に応じて給料が出る。月に一度の議会は仕事を終えた17時から始められる。不正な議員歳費も発生しない。」
このようなスウエーデンからは学ぶべきことがたくさんありますね。
また、インターネットで調べるとスウエーデンでは変わった葬儀もありました。葬儀のあり方は火葬が許可されるようになって匿名の共同墓地があり「森の墓地」として世界遺産にもなっている。遺骨は完全に灰になるまで焼かれ林に撒かれる。それは「遺体を急速凍結して堆肥化する埋葬法がある。文字通り身体が土に還る、その方法とは死後1週間以内に、遺体を度の液体窒素に浸して完全凍結させる。実はこれは、インスタントコーヒーやカップスープなど、フリーズドライ食品を作る技術と同じ。人体の細胞は急速冷凍処理によって硬くなり、崩れやすくなっているので、棺ごと機械で振動させると、短時間で粉状になる。乾燥機にかけて水分を完全に飛ばし、歯の詰め物など残った金属を取り除けば完成だ。粉末には臭いも無い。粉は25〜30キログラムになり、これを、でんぷんで作った別の棺に入れて地中約50センチメートルに埋める。棺も含めて1年以内で完全に土に還る。」 この葬儀は焼かないが骨が破壊され粉末になるので火葬と同じ状態になり土葬の会としてはお勧めできない。また行程も1、冷凍。2、棺に納める。3、凍結。4、粉砕。5、乾燥。6、分別。7、再納棺。8、埋葬と複雑になります。
ここで参考になるのはでんぷんでできた棺の利用ですが、通常の棺は木製ですので土に帰ることでは同じです。
今後の課題として一人暮らしの世帯が増えると孤独死を迎え、土葬の会員であっても確実に土葬をされるための準備をしておかないと火葬にされる恐れがあることから、カード形態の遺言を作成して所持品とともに携帯できるようにする案が示されました。また従来の老人ホームのように施設に詰め込まれて生活するのではなく、独身者など一人暮らしの人たちが集まって田舎で自給自足できる共同生活で協力しながら健康で過ごし死期が迫っても病院へ運ばれることなくその施設で死を迎えることができるようにしたい。そこでは建物から自由に外に出て施設内で畑作、動物を飼い、散歩をしたり家族や友人知人との交流もしやすい場とし、生き甲斐を持って終末を過ごせるならばそれは幸せではないでしようか、そのようなグループホーム形式は今後の課題ですね。
9月17日
札幌の小嶋明美さんが入会されましたのでご意見を紹介します。
「30年ほど前、道新のコラムで九州の黒島?では今でも土葬で「わしはあの山に埋めてもらうのさ」と普通に会話しているという…それ以来、私もそうやって死にたいと思ってました。どうすれば可能だろう?と常々考えてました。そんな話しを友に話したら、ネットで調べてくれました。一般では相手にされないことと思っていました。「もう国内では無理と思うから死ぬ前にハワイに移住したら…」とか教えてくれる人もいました。国によって様々なんだ…と思いました。私は単に土に戻りたい。焼かれたくないと思うだけです。」
9月29日
埼玉の石川裕子さんが入会されました。
「はじめましてまして、土葬の会へ入会しますので宜しくお願いします。土葬ありきの考えを持つ人たちとわずかながらこの現代の日本で土葬による埋葬が存在していることと、そのための会の存在に驚きと安堵感と希望を持つことができました。火葬に対し違和感を持つ人たちがいて、このような想いは自分だけではないことも知り得て良かったですし、安心しました。火葬に対する恐怖と嫌悪と惨さなどなどは未だにあります。そして母も私と同じ想いをしています。生まれてきた以上、死ぬのは仕方がないですが火葬されたくない。それを目にしたくない。この想いを抑えながら日常生活をおくっていますが不幸があると火葬のことを意識してしまうのです。」
10月17日
東京都の前田憲太郎さんが入会されました。
「土葬の会に賛同し土葬を希望します」
11月2日
朝日新聞に「神社乗り出す墓地経営」という記事が出ました。
どういうことかというと、霊園や納骨施設の運営に乗り出す神社が全国で増えているという。「少子高齢化や宗教離れに直面する中、安定した収入を確保などの狙いがある。また宗教を問わない霊園もある。神社本庁の傘下の神社は7万9千。収入源は氏子の寄付、お守りや絵馬の授与、祈祷、賽銭で寺院に比べて少なめだ。
この記事の中に、山梨で神道埋葬祭を行った際にそのことを調査に来られた神職の柴田さんが載っていたので、早速連絡を取ってみました。土葬の出来る墓地が出来たのですか?との問いに、すべて火葬が前提ですとの返答でした。そして神道で土葬の出来る墓地はやはり山梨だけだそうです。以前山梨においでになったおりに、「神道は本来土葬なのですが、今や土葬の選択肢は無い。」と聞きました。そして、今は神道が霊園や納骨施設の運営に乗り出したとはいえ、本来の土葬を継承するのではなく収入確保のためになってしまっている。神道の神髄は何なのか、人間の都合で変りゆく葬儀のあり方は日本全体にありがちな経済至上主義のようでむなしく思うのです。
それでも柴田さんは神道の土葬復活を望んでおられ、土葬を行う場合はあらかじめ連絡をいただき是非立ち会って見学したい、とおっしゃっておられました。
12月4日
神奈川県の中村さんが入会されました。まだ28歳という若い方ですが、いまからこのような考え方を持たれていることに感銘を受けますね。会では20代の会員はお2人目です。
「火葬は何か大事なものが失われる気がします。僕のような入会者が今後増え、土葬の会が発展し土葬が日本の葬儀の主流になることを心より願っております。」
12月6日
「死後土葬を希望しています。年齢が若いため墓地の購入はまだ先だと思いますがいまから入会することは可能でしょうか。」
千葉県の椿友汰さんが入会されました。なんとまだ19歳の学生さんです。先見の明があるというか、いまから死を想定され人生を送られる考えに驚かされます。いやはや土葬の会の会員の若返りが起きていますね。世間では少子高齢化を危惧していますが土葬の会には当てはまりそうもありません。
あとがき
年明けの予定としましてパンフレットの完成を予定しています。このパンフレットは土葬への関心を得るための一つのきっかけにと作成を始めたものです。
世間では、もうあり得ないと思われていた土葬を紹介するのですから、受け取る人はきっと衝撃を受けるでしょう。会員の方は誰かから紹介されて入会したのではなくご自分で悩み考え探されてたどり着いて来られた方がほとんどです。
ですから私たちからこのような会があることを知らせるのは意味があるのです。
私は、絶滅寸前の土葬と同じように、こちらは絶滅してしまったオオカミの復活を目指しています。オオカミはもともと日本にいて野獣の王者として、頂点捕食者として君臨していました。しかし人間はこのオオカミを絶滅させてしまったのです。その結果サル、シカ、イノシシが増加し農林業被害と人的被害も発生し私たちの生活を脅かしています。生物多様性という言葉が使われるようになったのは人間による環境破壊、搾取、間違った環境支配によって自然界が滅んできたからです。いまや人間が人間自身をコントロールできない事態に陥っています。それゆえ学びが必要であり、自然界をもとの、むかしの豊かな人間と自然が調和した世界を取り戻すことが急がれるのです。 山野井 英俊